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《選考委員》
委員長 古世古和子 (児童文学者・社団法人日本児童文学者協会理事)
委 員 黒須 隆一 (八王子市長)
委 員 石川 和昭 (八王子市教育委員会教育長)
委 員 樫ア 彰男 (八王子商工会議所会頭)
《総評・選評》 委員長 古世古和子
〈総評〉
八王子ファッション都市協議会主催「8人の王子」創作童話コンテストに、295編の応募がありました。
第一次選考の結果残された25編を、募集の意図や願いなどをふまえながら読みました。
その一編一編にこめられた作者の創意の多様さにおどろきましたが、残念に思ったこともありました。それは、「募集要項」または八王子市紹介にキーワードとして示された市の発展願目(緑、水、光、智…等)と「8人の王子」(の8人)に、忠実にとらわれてしまっている、という点でした。そのために作者それぞれの折角の創意を生かしきれず、概して筋書・ストーリーづくりで終わってしまっているように思えました。
創意のうえに設定されたテーマ、それを生かす構成などが、25編中のどこかで似たり寄ったりになり、ドラマ(物語世界)としての独自性が読む者の心に迫ってこない。特殊な場面や人物の印象がくっきりと残らない、という残念さでした。
とはいっても、自由でのびやかな、そして生き生きとはずみのある作品世界を創り出したい作者たちにとっては、最も苦心を重ねた点であっただろうことは、よくわかりました。
読者の共感をよびさまし、同化のよろこびを与えてくれる作品世界。創り出された作品世界の表現の深さ、新しさ、楽しさなどの視点から、各賞にふさわしいと思える作品を選出いたしました。
〈各賞選評〉
○グランプリ 「みらいの八人の王子さま」 白川みこと
主人公は「たなか時計店」の子どもである<ぼく>。
いよいよ八王子まつりが始まるので、銀杏通りにあるぼくの家の前には、朝早くから開店準備の露店が並んでいる。
この町で「8人の王子さま」のよび名で親しまれているのは、商店街に店をかまえる時計店、建具屋、金物屋、酒屋、着物屋、コンビニ、カメラ屋、ラーメン屋の、店主グループだ。じっちゃん世代は白、父ちゃん世代は青、ぼくら子ども連は赤の、その背中には「8人の王子さま」と文字もくっきりのそろいのはっぴを着て、まつりやイベントで王子さまのように大活躍をする――という設定。
じっちゃんは、おととい太鼓の練習中に腕を痛め、きのう父ちゃんは山車を引く予行練習中に腰をいためた。ぼくも子ども音頭のレッスン中に足をくじいた。じっちゃんは引退をみとめないが、今は父ちゃんたち二代目王子さま連が主力でまつりをもり上げる。
応募作品中この作品は特殊に現実の日常と地域に根ざしたリアリズムであった。じっちゃんも父ちゃんもぼくも、その人物像がくっきりと描かれていて、意気盛んな火花を散らす様や活気が読みとれる。臨場感も満たしてくれる。伝統や地域文化の継承というテーマを、子どもの言動を通して描き出し、優れていた。
○優秀賞 「ことば」 水谷俊樹
むかしむかしのおはなしーで始まる作品。
広い広い土地を治めている王様がいる。しかしその土地を何と呼べばよいのか、誰れも知らない。王様には子どもがひとりいて、王子と呼ばれているが、その名は誰れも知らない。王子は父王の仕事は大変だとわかっているし、大きくなったら父王のようになりたいとも思ってはいる。友だちもいないというこの王子は、城を出た地で、王子と同じくらいの背かっこうの男と出会う。黒い顔にとがったくちばしをもち、不思議な格好をしていて……背中には翼がついている。自己紹介で、おれはカラス天狗のクロ、と名のる。
クロという初めての友だちをもった王子。しかし、ふたりだけでの遊びでは、楽しさが足りない。そこでクロは「簡単さ、王子をバラバラにしちゃえばいいのさ」と言ってのけ、天狗の団扇で王子を一あおぎ。すると王子は8人に分身。つまり〈ぼく〉が八人になった。
8人に分身した一人ひとりのぼく(王子)は、あの村、この村との出会いの中で、それまでは全く知らなかったくらしのための仕事も知り、自分の中に眠っていた様々な力を知る。
このように書くと、作者がストーリーの発展のために都合よく分身した〈ぼく〉を動かしていると思われそうだが、決してそうではなく、村から村への移動は展開の必然に支えられていて、疑念をはさむスキがない。
この作品内容からあぶり出されるテーマは、「自分とはいったい何者か」といった自分探しではないだろうか。
他作品にも天狗はよく登場したが、その天狗はほとんど強くて威厳があり、持つ力は人間の上という描かれ方だった。その点カラス天狗のクロは遊び好き。「ずっと城ぐらしだったので、好きなだけいたずらがしてみたかったんだよ」と本心をうちあける王子を、よく理解する相手であった。
八人に分身した〈ぼく〉は結びで城に集まるが、それぞれが心中にもつ特別な「詞(ことば)」に気づいていた(匠、知、花、光……など)。王子がつかんだ詞は「夢」であった――。
この作者の新しい発想、複眼の視点に感心させられた。
○優秀賞 「桜の下の八人の王子」 中崎千枝
この村の猫たちには、ちょっとした秘密があったのです― というこの作品は、無理な意気張りや気どりがなく、言葉や表現も内容にふさわしく選ばれていて、創作意図やテーマがわかりやすい。
猫たちは、細長い棒、ささの葉、かけた茶わん、こわれたバケツ、小さなひょうたんなどを楽器に、猫オーケストラを作っている。演奏をきいてくれるのは、丘の上の一本の桜の木。ところが、桜の木は柵に囲まれ、立入禁止の看板が立てられてしまう。美しい花が咲くと、方々の村から花見の人々がやってくることに目をつけた村々から、桜の木をゆずってほしいとたのみに来て、その上、願い出たのはこちらが先だ、いや後だ、と争いごとまでおきる始末。それで立入禁止の看板に。楽しみな演奏の場所を奪われたのは猫たち。
結末へと導くプロセスが、楽しくユーモアも交えて描かれた。心なごむ作品であった。
○奨励賞 「七色の影と黒い怪物」 岩田隆幸
昔、ある町に住む姿も美しく武術にも優れた七人の王子は、ふつうの人とは違い、七人それぞれ色の異なる影をもっていた。
近くの山に住む怪物は、自分の姿はみにくいと思っていて、美しいものが大好きである。
ある日山を下った怪物は、王子たちの影を見てその美しさにおどろいた。そこで怪物は美しい影ほしさに、王子たちの影をはがしとる。そして山にもどり、自分の黒い影をはがしとり、赤い影をそこにおいて、その美しさにため息をつく。次には青、次には黄と、影をとりかえおおよろこび。
山からおりた怪物に最初に気づいたのは、町はずれに住む絵の好きな少年で、その時も銀杏並木の下で絵を描いていたのだった。
影をはがしとられ倒れた王子たちに涙する王と妃。弓矢で立ち向かった兵士たちも怪物になぎ倒されたのだし、武術自慢の王子たちも影をはがしとられて倒れている。王が、だれか影をとりもどしてくれ! と命じても、もう誰れも動こうとしない。
少年は怪物を追って山に来た。そして影をとりかえては得意になっている怪物を見た。
少年の頭に、ある考えがひらめいた。絵の好きな少年は、色は重ねればどうなるかを知っていた 。
少年と怪物が間近かに寄り、対話して作品は展開するが、その場面描写が映像または絵本の頁をめくるように、あざやかである。
結びで描かれる情景も、さらにまた怪物の心の変化も、ごく自然に納得できるように描かれていて、読後感の良い作品であった。
○奨励賞 「八色の虹」 伊藤友香
ある地に、八色の虹に守られているといわれている不思議な町がありました と書き出されたその町には、光を司る八人の兄弟王子がいて、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、白の各色でよばれていた。例えば「赤の王子」というように。王子たちは互いの姿も見え、話もしたが、人間たちには声もきこえないし、姿も見えなかった。
ところが、一人の娘はその会話を耳にして自分の考えをいった。娘は白い杖を持つ、目の不自由な娘であった。
旅人であるこの娘に手をかし、宿へ案内した女性は、気の良い町の女性であり、娘は安心して宿におちつく。そこへ、自分たちの会話に反応した人間に会ってみたいと考えた王子たちがたずねて来る。王子たちは、自分たちのそれぞれが司る色彩=光について語り、娘はそれを理解する。そして、旅をしながら王子たちから聞いた話を語り伝えた。八人の光の王子が作り出す八色の虹に守られた町、それは「八王子の町」であると。
光の王子たちと目の不自由な娘との出会いを描いた作品なので、ドラマ性には欠けるが、読者の感性を耕やし想像力を誘い出すという点で評価できる内容であった。
○奨励賞 「八人の王子」 竜田ゆう子
あるところにとてもまずしい国がありました 、この書き出しではいかにもありきたりであるが、この作品は六人の少年と二人の少女の登場により、場面摸写に臨場感が与えられていた。意外性=ストーリーの予想外の展開、も仕組まれていて、構成力に優れた作者であろうと推察した。
登場する六人の少年、ふたりの少女とも、食のために働いているが、その雇い主たちはいずれも上前をはねるような小ずるさを持っている。そのような悪や毒も作者は目配りよく描いていて、作品世界のリアリティを確かなものにしていた。この少年少女が、実は、雪の山にすむ魔女に生れるとすぐ奪われた王子たちであったという結び。よく練られた作品であった。
○奨励賞 「八王子物語・七色の蚕」 中路万理
その地の王様には七人の王子とひとりの姫がいた。末っ子である姫はユリカという名で12歳。このあたりには、120年に一度鬼があらわれて、美しい娘をさらっていくといういい伝えがあった。6年まえに妃に先立たれた王は、妃の遺言通りにユリカに男装をさせていた。さて夏まつりの夜である。宮殿の広間は松明で照らし出され、男装のユリカは輝くばかりに美しい。
いい伝え通りに鬼はやって来た。七人の王子たちは刀を抜いて鬼にきりかかったが、「嫁はお前だ、9月25日にむかえに来るぞ」という言葉を残した鬼も、王子たちも消えていた−−。
地面を這いまわる蚕、それが兄たちであるとさとったユリカ。
ここまでの情景が、相当に達者に描かれているように、結末への運びも劇的に描かれていて創作力がうかがえた。読者は、どうなるのだろうと、ストーリーの先を想像したくなるにちがいない。
○奨励賞 「つるばらつるばら」 八島雅子
東の果ての小さな島の王と妃の間には子どもが次々と生れた。この世になくてはならないもの、光、緑、水、匠・・・などを王子たちは名として与えられた。夢は八番目に生れたが、難産であったために妃は命を失った。なげき悲しんだ王は、夢を乳母にあずけ城外で育てさせた。
夢は何をするにも不器用で、努力するにもかかわらず不器用から抜け出せない。
父王や兄たちへの想いをつのらせ、やっと10歳で城にむかえられた夢−。
タイトルの「つるばらつるばら」は、他の作品群と異っていておもしろい。兄たちにもうとんじられ城内でも孤独な夢。作者は多分、作中の夢と対話しながらストーリーを創っていったにちがいない。物語づくりがやや情に流れてはいるが、人の心の優しさを描いているところに共感した。
○奨励賞 「やまゆり姫と8人の王子」 若林幸子
高尾山の奥に住むやまゆり姫と、姫に憧れを抱く8人の王子が登場する。
夏のある日、山麓に住む王子たちの耳に、姫が体調を悪くしているという噂が入った。そこで王子たちは相談し、見舞いのプレゼントを持って姫を訪れることにした。
緑の王子はきれいな空気を、光の王子は光を、匠の王子は安らげる家への誘いを と。8人の王子それぞれが自然界で司る贈り物を用意していったが、姫はどれも受けとらなかった。「私のこの病気を治せるような王子はいなかった」「・・・この地球自体、今の私のような状態になりかけているのよ」と、姫はいう。プレゼントを差し出す8人の王子それぞれと姫との対話は、王子は受身であり、姫のエコロジカル・バランス観が主となっていて、それは、作者の生の主張のように読みとれてしまう。また、8人の王子は姫を救おうと相談し、その方策を実行するために頑張り、「ついに真の村が蘇りました」と、書かれているが、実際の頑張りの場面は描かれていない。
姫の命は尽きた。王子たちはガラスの棺におさめた姫を川に流し涙する。その目に見えたのは、流れのほとりに咲いた一輪の小さなヤマユリ。その背後一面にも「たくさんのヤマユリが・・・」動植物と自然環境との間にある均衡関係の大切さと、物質文明の進歩によるそのバランスの崩れなど、作者がこの作品を書こうとした創意をくんでこの賞に。作者には今後も創作を志してもらいたい。それには、姫の苦しみの場面、緑の王子の具体的な行動の場面描写などを。また、村が蘇りに転ずるには、読者の心をゆさぶる(ドキドキさせる)ようなハードルも設定できるように、と願っている。
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