『思いつくままに』
『思いつくままに』
 
Vol.44 昭和の時代を
 
1月17日、八王子在住の演歌歌手が逝った。加住に住んでいた井沢八郎さんである。高音域が伸びやかな歌声の持ち主であった。私も縁あってお別れ式に参列したが、最後に井沢さんの持ち歌「男船」のメロディーが流れる中、愛嬢の工藤夕貴さんが涙で送っていた。
 
私は井沢さんの仲人を務めた関係もあり、ご家族とは何かとお付き合いの機会もあり、夕貴さんは私を“おじさん”と呼んで親しくしてくれた。昭和という時代を象徴する井沢さんの大ヒット曲“あゝ上野駅”は、戦後の昭和を生きた人々には忘れられない一曲となった。
 
商工会議所の議員に、集団就職列車で上野駅に着き、青春時代を仕事一筋に励んだ体験を持つ人もいる。現在は会社の経営者として重きをなし、積極的に地域づくりへの貢献もされているが、“あゝ上野駅”を涙ながらに熱唱する姿には、不安と寂しさに一睡もできなかった集団就職列車の一夜が偲ばれるのである。
 
今、団塊の世代の定年退職が話題となっているが、金の卵ともてはやされ、中学を卒業と同時に遠く親元を離れ、戦後日本の復興期を背負った世代に、限りない敬意を表したい。
 
郷土出版社から東京都の歴史シリーズ「八王子・日野」が出版された。この歴史書には、約200万年前の八王子の地質時代の形成に始まり、1万5千年に及ぶ人類の足跡の紹介。さらには自然の変遷、まちづくりの変遷、そしてそれぞれの時代の中で八王子を創ってきた先人たちの姿、歴史を築いた人物像が登場する。
 
私はこの歴史書に目を通しながら、改めて私たちの生きた時代を正確に記録・保存し、後世へ伝える努力が必要なことを痛感した。“昭和”の時代一つに視点を当てても、すでに遠くなりつつある。
 
私が生業としてきた八王子織物の分野でも、その技術や技は既に多くが失われつつある。地域の歴史には失ってはならない「心のよりどころ」があると思う。先人たちが血のにじむような努力で完成させてきた技術の成果としての“織物”を歴史の生き証人として、保存・伝承する歴史館ぐらいは考えるべきであろう。
 
『石井美千子人形展・昭和のこどもたち』にて
 
昭和にまつわる二つの話題に触れたが、遠くなる昭和の時代を単に懐かしむだけでなく“八王子と昭和”の歴史的な意義付けと昭和の財産をどう今後に生かしてゆくのか、私たちの年代への最後の宿題なのかも知れない。
 
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