『思いつくままに』
Vol.29 科学技術と飢餓と
地球から3億キロも離れた小惑星に探査機「はやぶさ」が着陸し、地表の岩石資料を採取することに成功したとのこと。先月の末に、我が国の科学技術の水準の高さを示す快挙として大々的に報じられた。12月の初めには地球への帰路につき、およそ10億キロを飛行し一年半後には地球に帰還する計画という。何とも壮大な夢多き宇宙へのチャレンジである。
科学技術の進歩は人類の知恵に新たなページを書き加えることであり、素晴らしいことだ。1年半後に無事地球へ帰還できるよう祈りたい。
科学技術
話題を身近な地球上のことに移そう。日本のほぼ反対側にアフリカ大陸が横たわっている。日本からの距離はわずかに数万キロに過ぎない。この大陸のサハラ砂漠の真ん中にニジェール共和国という国がある。地球上で最も暑く、最も降水量の少ない地域で、世界の最貧国の一つとされている。
今この国は深刻な食糧危機に見舞われ、数百万の人々が飢えに苦しみ、多くの子供たちが栄養失調によって生命の危険にさらされているという。私たちの年代は、60年前の敗戦によって、深刻な食糧難を体験している。それでも当時日本の子どもたちが餓死したという話は記憶に無い。しかし、この国では3人に1人の子供が5歳の誕生日を迎えることはないという。
“国境なき医師団”レポートはこの国の子どもたちの飢えの実態を次のように伝えている。「栄養の摂取が不足すると、体内では致命的な悪循環が生じる。長期間、食事を取らずにいると胃が収縮し、消化能力も低下するため、一度に摂取できる食事の量が減少し、同時に空腹の感覚も麻痺してゆく。栄養の不足によって空腹とのどの渇きが消えてゆく一方で、苦痛は増してゆく。体を動かそうとすると、萎縮した筋肉は激しく痛み、極度に乾燥した皮膚は破れる。こうした耐え難い苦痛の後で多くの子どもたちは命を失って行くのである。」
地球は近年、温暖化によって様々な異常現象を引き起こしている。熱波・異常高温・異常多雨や少雨・旱魃・ハリケーンの強大化など、地球規模で異常が頻発している。こうした現象は地球が上げている悲鳴ではないのか。人類の豊かな生活へのあくなき追求がもたらした自然環境の破壊に対する警鐘と受け取るべきものだ。
将来、人類が広大な惑星間の宇宙旅行を実現させたとき、その地球の一角で食糧難に喘ぐ人々が存在するとしたら、科学技術の進歩とは一体何なのか。地球からの警鐘は、人類が蓄積してきた知恵と技術と金の使い方を問うているのだ。遠い宇宙を舞台にした科学の成果と地球上のニジェールの悲惨な子どもたちの様子が、相容れない思いとなって駆け巡る昨今、まちははや北風が吹き抜ける師走である。
▲PageTop

お問合せ: 八王子商工会議所
〒192-0062 八王子市大横町11-1  Tel(042)623-6311
当サイト内のあらゆる文章、画像などを作成者の許可なく転載・使用等を行うことを固く禁止します。